bravesoftではじめての試みとなるAdvent Calendarも最後の記事となりました。
今年もあと少しで終わりますが、引き続きコロナの影響もあり、記憶に残る1年になったのではないでしょうか。
最後のAdvent Calendar記事ということで、今年1年のITニュースを簡単に振り返っていきたいと思います。とはいえ、莫大なニュース量なので私の独断と偏見でピックアップしております。
※一部関連ニュースは該当月ではないのでご注意ください。
1月:去年の振り返りや統計
この時期としては新しいことよりも、去年がどうだったかというニュースが多くでてきます。
コロナの影響もあり、引き続きモバイルアプリが成長を見せており、ダウンロード数も過去最高の数字となりました。
世界のアプリ支出額は2025年までに約28.4兆円に成長との予測もあり、引き続き成長が期待できるエリアになっております。なお、2021年の速報結果もでており、引き続き消費者支出は伸びていることが確認できます。
モバイルアプリが成長を続けた2020年、ダウンロード数は記録的な2180億件に、消費者支出は約1兆4900億円
アプリストアの2021年消費者支出は過去最高約15兆円、新規インストールは1436億回を記録
クラウドインフラ市場も伸びてきており、クラウドへのシフトが引き続き進んでいることが見て取れます。その中でも、AWSが引き続き強いですが、Microsoftが伸びてきているのは注目です (元MS社員として個人的にはうれしいですが)。クラウドインフラを見たときに、AWSは主軸としつつも、複数のクラウドインフラを把握しておく必要が出てきそうです。
クラウドインフラ市場は2020年に13.6兆円に成長、リッチな企業はますますリッチに
近年セキュリティ周りのニュースも多く見るようになりましたが、特に注目される個人情報の流出については、去年で2151万人の個人情報が流出する結果となっておりました。
システム開発においては、機能開発だけではなくセキュリティを考慮する重要性も年々上がってきているかと思います。
2020年は2515万人分の個人情報が流出 原因の多くは「ウイルス感染・不正アクセス」
2月:Clubhouse人気の加速、一方Amazonでは転換期へ
credit: clubhouse
リリース自体はもう少し前ではありますが、この時期くらいから日本のメディアではClubhouseに関する記事が結構出はじめてきました。多分今年一番注目されたスマホアプリではないでしょうか。
特にスタート当初は招待制であることやトークだけに特化した機能である点からも、芸能人が参加したりと話題となりました。一方、現在は皆様はまだ使っておりますでしょうか? 人気の急速な拡大とともに沈静化のスピードの速さに驚きを感じます。
Clubhouse、そしてDispo 招待制というハードルがありながら緩くつながれるアプリに人気が集まる時代
新しい企業もあれば、Amazon という巨大企業においては、ジェフ・ベゾスがCEOを退任し会長になりました。AppleやMicrosoftもですが、CEOがわかることで企業として転換ポイントになることもあるので、EC/クラウドが順調なAmazonがどのように変化をしていくかが注目されます。
ジェフ・ベゾス退任発表。アマゾン創業者が全従業員に送ったメール
3月:NFT が更に注目
credit: yahoo
NFT (Non Fungible Token) 自体は今年に始まった技術ではありませんし、ベースとなるブロックチェーン技術も今に始まったことではありません。
しかし、NFTのアート作品に対して高額で購入といったニュースがこの時期から増えてきました。年末にかけても継続的にNFT作品の購入のニュースは続いております。
この流れはもうしばらく続きそうですが、実際の絵を持つことと比較して、どこまで価値を持つかは注目されそうです。
イーロン・マスク氏の妻Grimes、ブロックチェーンのNFT作品を約600万ドルで販売
NFTアートが約1300万円で落札 世界的VRアーティストのせきぐちあいみさんに、“VR一点もの”オークションに挑戦した経緯を聞いた
4月:半導体不足が引き続き。それでもApple新製品など発表
credit: shikigaku
半導体不足は少し前から言われておりましたが、引き続き半導体不足が続く見込みとのニュースがでました。それに伴って、PC市場として需要はあるものの価格上昇などの影響が出てきております。PCだけでなく車、モバイル機器、ネットワーク機器など様々な電子機器では半導体が使われているので、長期化することでの影響が懸念されてきております。
半導体不足がいわれるなか、例年通りAppleの新製品の発表が行われました。今年の秋にもiPhone13の発表などがありましたが、去年のM1 Macの登場といったニュースの程のニュースはなく、大きな変化は感じられない製品発表だったのではないでしょうか。来年に期待したいところです。
5月:情報の流出は引き続き
credit: サイバーセキュリティ総研
情報流出系の話は随時発生しているニュースですが、今月はメルカリやOmiaiアプリでの漏洩、ランサムウェアのニュースなどが複数の漏洩ニュースが出ていました。
マッチングアプリ「Omiai」、約171万件の年齢確認書類が外部に流出–6割は運転免許証
ランサムウェア攻撃受けたColonial、身代金5億円超を支払ったとの報道
また、漏洩の別の観点では、従業員が営業秘密を転職先に持ち出した可能性という点での訴訟がニュースになりました。情報の重要性とともに、人に対する防止策の難しさが出たニュースではないでしょうか。
なお、ネガティブなニュースが多かったですが、ITという点では、Google I/Oの発表がありました。
色々とありますが、私が1つ注目するところをあげると、検索アルゴリズム「MUM」(Multitask Unified Model)の発表ではないでしょうか。「検索」自体は普段からの行っている作業ですし重要な項目なのですが、検索を強化した方法となります。
credit: ITMedia inc.
実際の例で使われていましたが、「今年私はアダムス山を登った。来秋は富士山に登ろうと思っている。富士登山に向けて、どのような準備が必要か」といった調査をしたい場合、今までは個々の内容を調査・検索する必要がありました。しかし、MUMではこれをまるっと引き受けてくれます。今回の例では、富士山というキーワードから大きさや日本の情報などを検索し、雨期の季節ならレインコートを提案するなど、個々の情報をまとめて検索をしてくれる技術となります。より検索も便利になる世界がでてきそうです。
6月:電子署名やクラウドIDEなど様々なDX
credit: yahoo
DX化というのは最近良くいわれておりましたが、ヤフーが取引先との署名を完全電子化したというニュースがでました。コスト削減になることは理解しつつも、自社だけでなく他社にも関わるもので、完全電子化した推進力の強さには驚きです。
ヤフー、取引先との署名を完全電子化 1件当たり3000円のコスト削減
また、はんこを作っているシヤチハタがNFT電子印鑑システムを開発したりと、たしかに印鑑って同じものだったりするなかで、唯一の電子データであることを保証できるNFTと組み合わせたといった面白い取り組みも始まっており、DX化が期待されるエリアですね。
一方で、ドバイ政府が完全ペーパーレス化を達成 といったニュースがでているなかで、日本がまだまだではありますので、デジタル庁 には期待したいところです。
開発でのDXという点では、開発で使用するIDEのクラウド化も進んでいます。AppleがXcodeのクラウド版を発表したり、MicrosoftもVS Codeのクラウド版を出すニュースが出ておりました。まだコスト面の懸念はありますが、開発環境も特に新しくすることがなく、クラウド上で進んでいく世界がでてくるかもしれませんね。
Apple、「Xcode Cloud」を発表 クラウド上で自動的にビルド、GitHubとの連携
7月:各社研修資料の公開ラッシュ。Rust言語の人気も。
credit: rust-lang.org
1社が出すと各社続くといったことはよくあることですが、各社研修資料の公開がニュースになると各社が続いてニュースになっておりました。このような教育基盤がある会社である点をアピールするにはとても良い施策と思えます。
ぜひ、興味がありそうな会社の資料を見てみるといいかもしれません。
ミクシィの新卒エンジニア研修資料が話題 講師は「モンスト」エンジニアなど iOS/AndroidアプリやUnity開発などを公開
サイボウズの“駆け出しエンジニア”向け研修資料が話題 Webアプリ開発やIT文化の基礎を無償公開
8月:OS市場に大きな変化が
credit: Microsoft
リリース日は10月でしたが、Windows11のプレビュー版の提供がこの月にされました。それと合わせて、Windows365の提供が開始されました。PC市場の中心OSであったWindowsがモバイルへのシフトなどの市場の変化に合わせて、クラウドでWindowsが使えるサービスを開始したのは元社員としては非常に驚きでしたし、よりスペックが低い端末からもWindowsが使えるといったところで、Chromebookに対しても大きな影響を与えていくかもしれません。また、AndroidアプリがWindowsで実行可能になるといったのも衝撃でした。今後もWindows&Microsoft の変化には注目です。
Windows 11で「Androidアプリ」を実行可能に、プレビュー版をWindows Insider Programで提供開始
一方、根強くCromebookの出荷台数が増えております。日本だとGIGAスクール構想に合わせてChromebookが提供され伸びたり、低コストでの提供などで増えているかと思います。
各社も色々Chromebookを出し始めていますし、先程のWindowsもクラウドとなってくると、より注目されていくかもしれません。
なお、OSよりももっと広いメディア市場という観点では、ネットの利用時間がテレビを見る時間を超えたとの統計がでました。テレビ離れというのが言われていますが、実際の数字として出てくるとより実感ですし、テレビCMよりネットCMという流れもより現実的になりそうです。
9月: Apple 課金方法のポリシーに進展
credit: James Martin/CNET
スマホアプリ開発・運営をしていないと興味がないニュースかと思いますが、アプリ開発会社として、Appleの課金問題ニュースについてあえて取り上げます。直接関係がなかったとしても、人気ゲーム「フォートナイト」が、アプリ外での課金に対してAppleからのガイドライン違反でApple Storeから消されて裁判沙汰になったことは覚えているかと思います(去年の話ですね。要はアプリで購入してもらうときにApple経由だと手数料取られるから別の方法でやったらBANされたってニュース)。この事件が起因になったかと思いますが、Appleの課金のポリシーに対して色々と言われてきました。その結果として、今年は手数料とポリシーの2点で進展してきました。
手数料については、2021年1月から導入された、年間売上高100万ドル(約1億円)未満の企業の手数料を通常の30%から15%に引き下げるプログラムの継続や、Apple Newsにおけるサブスクリプション手数料を30%から15%に引き下げるプログラムの発表されております。
「Apple News」、アプリ内課金の手数料を15%に引き下げるプログラムを開始
また、課金方法についても、公正取引委員会も関わったりとして、ポリシーの変更に向けての動きが確実なりました。
※10月には、アプリ内課金を矯正する条件をガイドラインから削除するといったことがようやく行われ、アプリからWebサイトに飛ばして課金ならOKそうとなりました。
10月: メタバースへの期待
credit: Meta
今年見る機会が増えたワードとして「メタバース」があります。メタバースとは、「超(meta)」と「宇宙(universe)」を組み合わせた造語になるのですが、昔流行ったセカンドライフなどの仮想空間にアバターとして参加し、コミュニケーションや経済活動などを楽しむ世界・空間となります。その大きな出来事としては、SNSで有名なFacebookが社名を「Meta」に変更しました。メタバースにかける会社の意気込みが感じられます。
その前段階として、様々な投資を行ったニュースが見受けられ、単なる社名変更だけでなく、実際のアクションを色々と起こしておりました。
フェイスブックがレイバンと共同でスマートサングラス「Ray-Ban Stories」発売、約3.3万円から
Facebook、「メタバース」開発に向け55億円を投資 「実現には10~15年」
実際に経済活動としても、メタバースの土地が高額で取引されたり、Facebook以外にもメタバースへの投資などもニュースになっておりました。どこまでこの経済圏が伸びていくかは注目ですし、ITにおいては外せないエリアになるかもしれません。
カナダの投資会社、メタバースの土地を約2億8000万円で購入
ナイアンティック「現実世界のメタバース」構築のために約344億円調達
また、Facebook(Meta)だけでなく、スマートグラス系の話も各社から出るニュースもでておりました。(Microsoft の Holo Lends は去年2が出たので、そのときにニュースが結構出てましたね)。各社のxRへの期待も見て取れます。
「Google Glass」法人向けモデルが日本でも 17万8000円で8月発売
11月:モビリティと無人店舗の再注目。一方個人情報も
credit: iPhone mania
自動車の技術はずっと続いている技術ではありますが、電気自動車・自動運転車について、改めて注目となるようなニュースがでました。アップルが自動運転車に乗り出すといったニュースや、今年最大のIPOが電気自動車メーカーであったりと、モビリティ技術は引き続き注目が高まっているのがわかります。
電気自動車メーカーRivianが上場、2021年最大のIPOに
ハードウェアと連携した技術でいうと、数年前あたりから見かける無人店舗技術について、ついにスターバックスがレジなしのカフェを開店するといったニュースもでました。
スターバックス、「Amazon Go」ベースのレジなしカフェを米国で開店
ハードウェア関連では、ロボティクス、IoT、スマートホームあたりも引き続き注目されていますが、テスラが人型ロボットを発表(これ実際動画みるとすごい)したり、ドローンの配達が10万件突破していたりと、実用と進化が進んでいることがわかります。
スマートホームでも統一規格を進めようとする動きもありますので、規格が統一されると連携や参入もしやすくなるので、機器を開発しているところだけでなく、ソフトウェアだけで参入するといったことも可能になりそうです。
スマートホーム規格「Matter」、製品の認定開始を2022年に延期
このような技術の進化もありながら、根強く注目されるのが「個人情報」。EUがGDPRを施行したりとありましたが、ついに中国でも個人情報保護法を11月に施行しました。
一方、以前からGDPRにおいても、実勢に制裁がされるニュースも出ておりました(基本大手ですが)。
WhatsAppに欧州のGDPR違反で約294億円の制裁金、ユーザー・非ユーザーに対する透明性の向上も命令
12月:宇宙技術への期待
credit: NASA
皆様御存知の方も多いですが、前澤さんが今月頭に日本人初の民間人宇宙飛行をしました。これ自体はITとはちょっと異なりますが、この背景には宇宙技術に対する変化が起きています。
テクノロジーの見本市であるCESの2022年には、新たなカテゴリーとして「Space Tech(宇宙技術)」が追加されます。また、NASAが宇宙ステーションの民営化に進んでいたり、イーロン・マスク率いるSpaceXを筆頭に民間企業における宇宙飛行に関するニュースが今年は色々と出てきました。宇宙技術自体昔は特別な感じがありましたが、民営化の加速とともに、宇宙技術自体も身近になり、参入も増えてくると思われます。来年も宇宙技術の展開は注目になりそうです。
NASAとAxiom Spaceが初の民間人のみによる国際宇宙ステーションへの宇宙飛行について発表
SpaceX、初の「民間人だけの宇宙旅行」打ち上げ成功 地球を3日間周回予定
スペースXが民間宇宙飛行士を国際宇宙ステーションに運ぶミッションを2023年までに4回予定
Blue Origin、7月に初の有人宇宙飛行へ–座席のオークションも開始
まとめ
今までにあげていないところで、今年よく見かけたワードの一つとしては、特別新しい技術ではないですが、ローコード/ノーコードのワードを見ることが増えたかなと思います。開発者ではない人も、簡単にシステムを作るという点で、DXの推進あたりともマッチして注目されたのではないかと思っています。
ここで取り上げられなかったものも多々ありますが、ざーっといくつかのニュースサイトを見直すだけでも結構な時間がかかりました。逆にいうとそれだけ変化やニュースとなる情報がある業種であると改めて感じました。一気に見るのは大変なので、日々キャッチアップしていくことが、やはり重要ですね。
というわけで、皆様良いお年を!!
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